意匠

我々は気づけば度々デザインで、
あったかもしれないもうひとつの世界を作っているように思う。

 

つくるとき、まずは対象の土地や植物の背景を読み解く。
この国に古くからある意匠の特徴も取り入れる。
ただ、それらを忠実に再現するのではなく、好奇心のままに妄想を織り込みながら形を作っていく。

 

たとえば蜜や炭酸のラベルに現れる世界一美味な架空の木「アルボルミラクロマ」は、
実際に商品に用いる全ての草木を組み合わせて作られている。
これは、レオ•レオーニの「平行植物」における嘘と本当の区別のつかないカオスをヒントにしている。

 

酒には、杉の生い茂る典型的な日本の山の風景を古典的な屏風画として纏わせた。
それらが湖を目前に浮く世界は、街に、家にいたはずの誰かが木の酒に酔い、
うっかり迷い込んだ夢現の森林旅の行く先を表していたりする。
わたしたちには普段、わたしたちのいる世界しか見えないけれど、
実は間近には、たくさんのもうひとつの世界があるように思う。

 

我々は今日も、人と植物が密に対等に呼応するもうひとつの、
そして近い未来に実現すると信じてやまない現実を、
デザインを通して皆と共に垣間見て、今に繋げる実験を興じている。